納品されたイラストを画面で見ながら、他の場所にも使っていいのかを考えている企業SNS担当者の情景

SNS運用の外注・発注の進め方|依頼テンプレと権利の確認ポイント

「画像だけでも、誰かにお願いできたらいいのに」

そう思って、はじめて外部の方に依頼してみた。上がってきたイラストはきれいで、投稿の反応もよかった。よかった、頼んでみるものだな——と思った、その2か月後。

会社案内のパンフレットを作ることになって、上司から「あのイラスト、使えるよね?」と言われる。

そこで、はじめて手が止まります。「……これ、使っていいんだっけ」

この止まり方、まったく普通のことです。外注は、頼むところまでは自然にできるのに、「あとでどう使えるか」だけは最初に決めておかないと分からないという、少し変わった構造をしているからです。知らなかったのではなく、聞かれる場面が来るまで気づけないだけです。

今日は、覚えることをできるだけ減らして、次の発注から使える形で整理していきます。

結論:発注のときに決めておくのは、この5つだけです。
何を・いつまでに(成果物と納期)
どこまで使えるか(媒体・期間・広告に使えるか)
著作権をどうするか(譲ってもらうか、使わせてもらうか)
素材の出どころ(使った写真・フォント・音源の確認)
お金のこと(金額・支払期日・修正は何回まで)

そして、これを口頭ではなく、書いて渡す。専用の契約書でなくて大丈夫です。メール1通で十分です。

何が起きているか:「お金を払った=自社のもの」ではない

いちばん引っかかるのは、たぶんここだと思います。

日本の著作権は、原則として「作った人」に生まれます。 費用を払ったからといって、自動的に発注した側に移るわけではありません。移すには、契約でそう決める必要があります。

つまり、発注書やメールに書いていない使い方は、お互いに「そこは話していなかった」状態になります。

誰かが悪いわけではありません。依頼した側も、受けた側も、そのときは投稿1本のつもりだった。それだけのことです。あとから使い道が広がるのは、むしろそのクリエイティブがよかった証拠でもあります。

そして、もうひとつ知っておくと気が楽になる話があります。

2024年11月から、いわゆる「フリーランス法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されています。 個人で仕事を受けている方に業務を委託するとき、業務の内容・報酬の額・支払期日などの取引条件を、書面またはメール等で明示することが、発注する側に求められるようになりました。報酬の支払期日についても、納品物を受け取った日から60日以内のできるだけ早い日に設定する、という考え方が示されています。

これは、身構える話ではないと思っています。

「条件を書いて渡す」は、もともと自分を守るためにやったほうがよかったことでした。それが今は、やることになった。つまり、一度ひな形を作れば、権利の整理と法令への対応が同時に片づくということです。二度手間になりません。

なお、発注する側・受ける側の規模や契約の形によって、関係する法律は変わります(下請取引に関する法令などが関わる場合もあります)。詳しい適用範囲は、公正取引委員会・厚生労働省が出している案内や、自社の法務・顧問の先生にご確認ください。この記事は、実務で先に決めておきたい項目の整理です。

つまずきやすいのは、この5か所

現場で「あ」となりやすいのは、だいたいこの5つです。先に知っておくと、避けられます。

  1. 作ってもらった画像を、別の場所に使う

Instagramの投稿用に頼んだイラストを、そのまま広告に回す。チラシに載せる。名刺に入れる。展示会のパネルにする。——使い道が広がるのは自然なことですが、最初に決めた範囲を超えていくのはこの流れです。

  1. 素材の権利が「個人利用のみ」だった

受けた方が使ったフォント・写真・BGMのライセンスが、商用利用に対応していなかった、という場合です。作った方も気づいていないことがあります。

  1. 元データ(編集できるファイル)がない

納品されたのは書き出し済みの画像や動画だけ。半年後に「日付だけ直したい」と思っても、手が出せない。担当者が変わったあとに効いてきます。

  1. 修正が終わらない/追加費用でもめる

「何回まで」を決めていないと、お互いに言い出しにくくなります。これは金額の問題というより、言い出しにくさの問題です。

  1. 誰に何を頼んだか、分からなくなる

やり取りがDMやチャットに散らばって、条件が探せない。引き継ぎのときにいちばん困るのがここです。

どれも、発注の最初にひとこと書いておけば起きないことばかりです。

決めることは、3つに束ねられます

外注するときに決めておく3つのこと(使う範囲・著作権・素材)を並べて示した図
発注で決めるのはこの3つ。左から、どこまで使えるか、権利をどうするか、使われた素材は確認済みか。

5つと書きましたが、①何を・いつまでに と ⑤お金 は、いつもの発注と同じです。外注ならではで迷うのは、残りの3つだけです。

1. 使う範囲

「どこで・いつまで・どう使えるか」です。次の4つを書けば足ります。

「じゃあ、全部OKにしてもらえばいいのでは」と思うかもしれません。気持ちはとても分かるのですが、範囲が広いほど費用は上がるのが普通です。作る側にとっては、それだけ渡すものが大きくなるからです。

なので現実的には、いま使う範囲+半年先くらいに使いそうな範囲を書くのがちょうどいいところだと思います。迷ったら、そのまま「広告にも使う可能性があります」と伝えて見積もってもらえば大丈夫です。聞くこと自体は、失礼でもなんでもありません。

2. 著作権

道は2つあります。どちらが正解ということはなく、依頼の大きさで選べば十分です。

A. 譲ってもらう(著作権の譲渡)

ロゴやアイコンなど、長く自社の顔として使うものに向いています。実務では、次のように書くのが一般的な型です。

本件成果物の著作権(著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む)は、報酬の支払いをもって甲(発注者)に移転する。乙(受注者)は、甲および甲が指定する者に対し、著作者人格権を行使しないものとする。

見慣れない文言だと思うので、なぜこう書くのかだけ添えておきます。

B. 使わせてもらう(利用許諾)

日々の投稿画像のような、数の多い依頼はこちらで十分なことが多いです。著作権は作った方に残したまま、使ってよい範囲を決める形です。費用も抑えやすく、受ける側も実績として紹介しやすいので、長く付き合ううえでは自然な形だと思います。

あわせて決めておくと親切なことが、ひとつあります。

実績としての公開(ポートフォリオ掲載)の可否です。作る方にとって、実績を見せられるかどうかは仕事に直結します。「未公開の商品が写っているので、発売後ならOK」のように、条件つきでも構わないので伝えておくと、お互いに気持ちよく進みます。ここを何も言わずにいると、相手は聞きづらいまま抱えることになります。

3. 素材

成果物の中で使われている、写真・イラスト・フォント・音源のことです。ここは、次の2つをお願いすれば足ります。

一覧をもらっておくと、あとで自分たちが修正するときに効いてきます。同じフォントが手元になければ、文字を1文字直すこともできないからです。動画の音源についてはSNS動画の音源・BGMの選び方に整理してあるので、依頼するときの前提としても使えます。

もうひとつ、生成AIを使ってよいかどうか。自社に方針があるなら書いておきます。禁止でも、条件つきで可でも、どちらでも構いません。いちばん困るのは、決めていないまま納品されて、後から社内で話題になることです。自社の考え方をまとめるときは企業SNSの投稿に生成AIを使うもあわせてどうぞ。

そのまま使える発注メールのひな形

契約書を作る話ではありません。メール1通です。コピーして、変えるところだけ変えて送れば、それで条件を書いて渡したことになります。

件名:【ご依頼】Instagram投稿用イラスト制作のお願い

○○様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
下記の内容でお願いできればと思います。ご確認ください。

【1. 依頼内容】
・成果物:Instagram投稿用イラスト 3点(正方形 1080×1080px)
・参考:(トーンの参考になる過去投稿のURL、または社内ガイド)

【2. 納期】
・初稿:2026年○月○日
・最終納品:2026年○月○日

【3. 納品形式】
・書き出しデータ:PNG
・編集用の元データ:あり(○○形式)でお願いします

【4. 使わせていただく範囲】
・媒体:自社SNS(Instagram・X)、自社サイト、社内資料
・広告配信:あり(ブースト・SNS広告での使用を含みます)
・紙媒体:現時点では予定なし(発生する場合は改めてご相談します)
・期間:定めなし
・加工:文字部分の差し替えのみ、当社で行う場合があります

【5. 権利の扱い】
・著作権:○○様に残す形(当社は上記の範囲で使用させていただきます)
・実績としての公開:可(○月○日の投稿公開後にお願いします)
・使用素材:第三者の権利を侵害していないことをご確認ください
 有料素材・フォントを使用された場合は、名称を一覧でご共有ください

【6. お金のこと】
・報酬:○○円(税込)
・修正:2回まで(それ以降は別途ご相談)
・支払期日:納品物受領日から○日以内(○月末日払い)
・振込手数料:当社負担

ご不明点や、条件で気になるところがあればお気軽にお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

長く見えるかもしれませんが、一度作れば、次からは金額と納期を変えるだけです。作るのに30分、以降は3分で済みます。

ポイントは【4】と【5】だけです。ここさえ書いてあれば、冒頭の「パンフレットに使えるよね?」に、その場で答えられます。

具体例で見る(あとで困らない書き方)

同じ依頼でも、書き方でその後がずいぶん変わります。

避けたい例

「Instagramに載せるイラストを3点、○月○日までにお願いします。1点○○円で」

悪い依頼ではありません。むしろ、ふつうにやり取りされている形です。ただ、使える場所が「Instagram」としか書かれていないので、半年後に他で使いたくなったとき、改めて相談することになります。相手にも、こちらにも、もう一往復が生まれます。

安心な例

「Instagram投稿用のイラストを3点お願いします。まずは自社SNSと自社サイトでの使用を想定していますが、反応がよければ広告配信にも使いたいと考えています。その前提でお見積もりいただけますか。紙媒体で使う可能性が出た場合は、改めてご相談します」

やっていることは、使い道を先に伝えているだけです。相手も見積もりを出しやすくなり、こちらもあとで気を遣わずに済みます。

これは駆け引きの話ではなく、お互いが同じ絵を見てから始めるための一手間だと思っています。

あなたへの影響

明日やること

  1. 直近に外注した成果物を、1つだけ思い出してみる。 全部さかのぼらなくて大丈夫です。よく使っている1点で十分です。
  2. そのときのやり取りに、使える範囲が書いてあるか確認する。 書いてあれば、それでこの記事の用は済みます。
  3. 書いていなければ、次に使いたい場面が来たときに、ひとこと確認する。 慌てて全部を確認し直さなくて大丈夫です。使う予定ができたときに聞けば間に合います。
  4. 上のひな形をコピーして、自社版として1つ保存する。 ここがいちばん効きます。会社名と、よくある依頼内容を入れておくだけで完成です。
  5. 納品済みの成果物の「元データ」があるか、フォルダを見てみる。 なければ、次の発注から納品形式に足します。保管の仕方はSNS運用の素材管理の型がそのまま使えます。
  6. 社内に外注の窓口が他にもあるなら、ひな形を共有してみる。 広報や総務でも、同じことで困っていることがあります。

全部を明日やらなくて大丈夫です。4番だけでも、次の発注から景色が変わります。

自社用の発注ひな形を作り終えて、安心して次の依頼を送っている企業SNS担当者の明るい情景

権利や契約の話は、読んでいて楽しいものではありません。うまくやっても誰も褒めてくれないし、成果としては「何も起きなかった」だけです。

でも、「これ、使っていいんだっけ」と一度立ち止まったあなたは、もうきちんと守れています。 危ないのは、迷わずに使ってしまうときのほうです。止まれたこと自体が、この仕事でいちばん大事な感覚だと思います。

それに、条件を先に書いて渡すのは、自分を守るためだけではありません。受ける側にとっても、いちばんありがたい発注者は「最初にちゃんと教えてくれる人」です。ひな形を1つ作るのは、その人に対する誠実さでもあります。

覚えるのは、使う範囲・著作権・素材の3つ。それだけです。あとはメールのひな形が代わりに覚えていてくれます。

チェックリスト(保存用・外注に発注するとき)

本記事は一般的な実務の整理です。著作権の扱いや、フリーランス法・下請取引に関する法令の適用範囲は、契約の形や事業者の規模によって変わります。実際の契約書・発注書の文言は、最新の公的な案内および自社の法務・顧問の先生にご確認ください。

よければ、こちらも

「これ、使っていいんだっけ」で止まったときに。企業SNS運用の実務ヒントを、メールでもお届けしています。よかったら受け取ってみてください。

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