オフィスの自席で、企業SNS担当者がノートパソコンの送信済みメッセージを見つめながら、返事を待って少し不安そうに頬杖をついている情景

SNS投稿を法務に確認してもらう依頼の進め方|早く返ってくる頼み方の型

キャンペーン投稿の下書きができた。 「プレゼント」「最安」「先着」——ちょっと気になる言葉が入っているから、念のため法務に見てもらおう。

そう思って、社内チャットに下書きを貼って「確認お願いします」と送った。 ……それから3日。返事はまだ来ていない。告知予定日は明後日です。

「催促したら失礼かな」「そもそも、法務に頼むほどのことだったのかな」 そんなふうに、ひとりでモヤモヤしたことはありませんか。

確認をお願いしようと思えたこと自体、投稿をちゃんと守ろうとしている証拠です。 返事が遅いのは、法務の人が冷たいからでも、あなたの頼み方が悪かったからでもありません。何を見ればいいのかが、相手に伝わりきっていないだけのことが多いのです。

結論:法務・広報への確認依頼は、「何を・どこまで・いつまでに」を1枚にまとめて渡すと、早く・ぶれずに返ってきます。
① 何を:投稿の完成形(文面+画像+公開日時+どのSNSか)をそのまま渡す
② どこまで:「この表現が言いすぎでないか」など、気になる点を1〜3個に絞って質問する
③ いつまでに:返事がほしい日時と、間に合わないときの扱い(公開をずらす等)を先に書く

そして、すべての投稿を法務に回さないこと。回す投稿の目安を決めておけば、あなたも法務も楽になります。

何が起きているか:法務とSNS担当の「時間の感覚」が違う

SNS担当と法務・広報の間で起きるすれ違いには、だいたい決まった形があります。

つまり、返事が遅くなるのは、依頼を読み解く手間が、相手の側に残っているからです。 この手間をあなたの側で少しだけ先に引き受けておくと、確認はぐっと早くなります。相手を急かすのではなく、相手が答えやすい形で渡す——これが今日のテーマです。

法務・広報に回す投稿の目安を決めておく

まず、どの投稿を確認に回すかを決めておきます。毎日の投稿をすべて回していたら、あなたも法務も続きません。

確認の重さ投稿の例回し方
回さなくていい日常の様子、季節のあいさつ、過去に確認済みの型どおりの告知自分で投稿前セルフチェックを通して公開
広報に見てもらう新商品・サービスの告知、社員が登場する投稿、会社の方針にふれる投稿広報(またはSNSの責任者)に確認依頼
法務にも見てもらうキャンペーン・プレゼント企画、「No.1」「最安」などの比較・最上級表現、効果・効能にふれる表現、他社の商品名や著作物を扱う投稿、PR・タイアップ投稿広報経由、または直接法務に確認依頼

この表は、あくまで出発点です。どこからを法務に回すかは、会社の規模や業種によって変わります。 一度この表を法務の人に見せて、「この線引きで大丈夫そうですか」と相談しておくと、次からは迷わずに回せるようになります。

投稿の承認ルート全体(誰が・何時間以内に見るか)をまだ決めていなければ、企業SNSの投稿承認フロー|速くて崩れない仕組みの作り方もあわせてどうぞ。この記事は、そのフローの中の「法務・広報に回すときの頼み方」に絞ったものです。

確認依頼の進め方:4つのステップ

確認依頼の4つのステップを左から右へ並べた図。左から、下書きを完成形に整える場面、気になる箇所に印をつける場面、カレンダーで期限を確かめる場面、1枚の依頼メモを渡す場面
「完成形にする→気になる点を絞る→期限を書く→1枚で渡す」。この順に整えると、確認が早く返ってきやすくなります。

ステップ1:完成形で渡す|「だいたいこんな感じ」で回さない

確認に回すのは、そのまま公開できる状態の投稿にします。

「画像はあとで差し替えます」「文面は少し変えるかもしれません」という状態で回すと、確認後に変わった部分をもう一度見てもらうことになります。 意味が変わる修正(数字・日付・金額・条件・画像の差し替え)をしたら、もう一度確認を受ける——このルールも一緒に共有しておくと、あとで「言った/言わない」になりません。

ステップ2:気になる点を1〜3個に絞って質問する

ここがいちばん効くところです。「全体を見てください」ではなく、あなたが引っかかった箇所を、そのまま質問にします。

質問が具体的だと、法務はその1点だけを確かめればいいので、返事が早くなります。 「どこが気になるのか自分でも分からない」というときは、それも正直に書いて大丈夫です。「キャンペーン投稿は初めてなので、景品表示法の観点で見てほしいです」と観点だけ伝えるだけでも、相手はずいぶん見やすくなります。

表示まわりで気をつけたい観点は、SNSキャンペーンの応募規約と景表法や企業SNSのPR表記ルールにまとめています。質問を考えるときのヒントにどうぞ。

ステップ3:期限と「間に合わないときの扱い」を先に書く

返事がほしい日時を書くのは、催促ではなく相手のための情報です。

・返事がほしい日時:10月14日(火)17時まで
・公開予定:10月16日(木)7時30分
・間に合わない場合:公開を翌週にずらします(急ぎではありません)

ポイントは「間に合わない場合」まで書いておくこと。 「ずらしても大丈夫」と分かっていれば、法務も無理に急がずに済みますし、あなたも期限を過ぎたときに慌てずに済みます。 逆に、どうしても動かせない日程(発売日・イベント当日など)のときは、その理由をひと言添えておくと優先してもらいやすくなります。

依頼は、公開日の3営業日前くらいを目安に出せると余裕があります(会社によって必要な日数は違うので、一度法務に「何日前なら助かりますか」と聞いておくのがいちばん確実です)。

ステップ4:1枚の「確認依頼メモ」で渡す

ステップ1〜3を、毎回同じ形の1枚にまとめます。形が決まっていると、法務も「いつものあれだな」と読み始められます。

【SNS投稿の確認依頼】

■ 何の投稿か
・SNS:Instagram(フィード投稿)
・公開予定:10月16日(木)7時30分
・内容:秋の新商品プレゼントキャンペーンの告知
・投稿文・画像:下に貼ります(このまま公開する完成版です)

■ 見てほしいところ(3つ)
1. 「業界最安クラス」の表現は、添付の比較資料を根拠にして問題ないか
2. 応募条件(フォロー+いいね)と当選連絡の書き方に抜けはないか
3. 画像の商品写真に写っている他社製の小物は、そのままで問題ないか

■ 返事がほしい日時
・10月14日(火)17時まで
・間に合わない場合は、公開を翌週にずらします

■ 確認後に変えたら、もう一度見てもらう箇所
・数字、日付、応募条件、画像の差し替え

返事をもらったら、どの版にOKをもらったかを記録しておきます。チャットのスレッドのリンクを投稿管理表に貼っておくだけでも十分です。 何かあったときに「この版で確認を受けていました」と言えることは、あなた自身を守ることにもつながります。

具体例:同じキャンペーン投稿でも、返事の早さが変わった

家具メーカーでSNSを担当しているCさん(ひとり運用)の例です。

秋のプレゼントキャンペーンの告知を、法務に確認してもらうことになりました。

最初の依頼 Cさんは下書きの文面だけをチャットに貼り、「キャンペーン投稿です。確認お願いします」と送りました。 法務のDさんは、別の契約書の確認で手一杯。画像がないので見え方が分からず、応募条件もどこまで決まっているのか読み取れません。「あとでまとめて見よう」と後回しになり、返事は4日後。そのころには、Cさんは画像を差し替えていて、もう一度確認をお願いすることになりました。

次のキャンペーンでの依頼 Cさんは上の「確認依頼メモ」の形で、完成版の文面と画像、気になる点3つ、期限と「間に合わなければ翌週にずらす」を書いて送りました。 Dさんは5分ほどで読み終え、「1は比較資料の日付を投稿にも入れてください。2と3は大丈夫です」と、その日のうちに返事をくれました。

Cさんがしたのは、相手が知りたいことを先に書いただけです。法務の人の忙しさは変わっていません。それでも、返事の早さはこれだけ変わります。

あなたへの影響

炎上やトラブルが起きたとき、真っ先に相談するのも法務・広報です。ふだんの確認依頼でよい関係ができていれば、緊急時の連絡もずっとスムーズになります(企業SNSの緊急時連絡体制|すぐ連絡が回る仕組みの作り方も参考に)。

明日やること

  1. 最近の投稿を3本見返して、「法務に回すべきだったか」を考えてみる:上の表のどこに入るかを当てはめるだけで、自分の会社の線引きが見えてきます。
  2. 確認依頼メモをコピーして、手元に置いておく:次に回すときに、空欄を埋めるだけで済むようにします。
  3. 法務か広報の人に、5分だけ相談する時間をもらう:「どんな投稿を回してほしいか」「何日前なら助かるか」の2つだけ聞ければ十分です。

チェックリスト(保存用・法務/広報への確認依頼)

全部そろえる必要はありません。まずは上の4つから始めましょう。

まずここだけ(最低ライン)

できれば(慣れてきたら)

明るいオフィスの打ち合わせスペースで、企業SNS担当者と法務担当の同僚が1枚のメモをはさんで向かい合い、笑顔でうなずき合っている情景
「何を・どこまで・いつまでに」を1枚で渡す。それだけで、確認は相談に変わります。

よければ、こちらも

企業SNS運用の実務ヒントを、メールでも少しずつお届けしています。ひとりで抱え込まず、続けられる運用を一緒に作っていきましょう。

「確認お願いします」のひと言の裏で、あなたはずっと、投稿の向こうにいるお客様と会社の両方を守ろうとしてきました。 法務や広報は、そのための味方です。頼み方を少し整えるだけで、ひとりで背負っていた心配を、一緒に持ってもらえるようになります。 まずは明日、確認依頼メモの型をひとつ、手元にコピーしておきましょう。

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