どのSNSを選ぶか迷いながら、ノートに手書きで書き出して考えている企業のSNS担当者の情景

企業SNSの選び方|商材と目的から自社に合う媒体を決める手順

「うちは、どのSNSをやればいいんでしょうか」

会議でそう聞かれて、少し言葉に詰まった。そんな経験はありませんか。

頭の中にはいろいろ浮かびます。若い人に届けたいならTikTokだろうか。写真がきれいならInstagramか。でも社長は「Xがいいらしい」と言っている。取引先はLINEを勧めてくる。競合はどこもInstagramをやっている。

結局、「じゃあ、とりあえず全部やってみますか」という話になって——3か月後、どのアカウントも中途半端に止まっている。

この止まり方、担当者の努力とは関係ありません。媒体選びは「どれがいいか」を考えると答えが出ない構造をしています。どのSNSにも良いところがあるからです。決め手になるのは、媒体の側ではなく、自社の側にある3つの条件のほうです。

今日は、その3つを順番に確認して、まず始める1つを決めるところまでを一緒にやっていきます。

結論:SNSの選び方は、この順番で決めます。
何のためにやるのか(目的をひとつに絞る)
お客さんは、どこを見ているか(推測ではなく、聞いて確かめる)
自社に、続けられる素材と時間があるか(写真・動画・文章のどれが出せるか)

この3つが重なるところに残った1つから始めます。最初から複数やらなくて大丈夫です。
そして、迷ったときの現実的な初手は、ほとんどの場合こうなります——「お客さんが検索したときに出てくる場所」を1つ(実店舗があるならGoogleビジネスプロフィール、なければ自社サイト)+ SNSを1つ

何が起きているか:媒体は「増やすのは簡単、減らすのは難しい」

いま媒体選びで苦しくなっているとしたら、たぶん原因はここです。

SNSのアカウントは、開設が5分で終わります。 お金もかかりません。だから、社内で「やってみよう」という話になったとき、止める理由が見つかりにくい。

でも、閉じるほうには理由が要ります。

「あのアカウント、もうやめようと思います」と言うには、成果が出なかった説明が必要になります。フォロワーが数百人でもいる以上、「その人たちはどうするのか」という話にもなります。結果として、止められないまま、更新だけが止まったアカウントが残る。

そして正直に言うと、最終更新が1年前で止まっているアカウントは、アカウントがない状態よりも印象がよくありません。 お客さんから見ると「この会社、大丈夫かな」に見えてしまうからです。

つまり、媒体を選ぶという作業は、やることを決める作業ではなく、やらないことを決める作業でもあります。ここが、いちばんエネルギーの要るところです。

だからこそ、選ぶ理由をちゃんと言葉にしておくことに意味があります。理由が言えれば、増やすときも減らすときも、同じものさしで判断できます。

もうひとつ、知っておくと少し気が楽になることがあります。

媒体選びは、一度決めたら変えられないものではありません。 3か月やって合わなければ、そこで見直せばいいだけです。選び直すことは失敗ではなく、運用の一部です。最初から100点の媒体を当てにいく必要はありません。

問い①:何のためにやるのか

いちばん最初に決めるのが、ここです。そして、いちばん飛ばされやすいのもここです。

「SNSをやる目的は?」と聞かれると、つい「認知拡大です」と答えたくなります。でも、認知拡大は目的というより結果の呼び名なので、これだけだと媒体が決まりません。

もう少し、現場の言葉に落とします。「これができたら、この運用は成功だった」と言えるものは何でしょうか。

目的(現場の言葉で)相性のいい媒体理由
近所の人に来店してほしいGoogleビジネスプロフィール、Instagram探している人に地図と写真で届く
商品を知ってもらいたい(一般消費者向け)Instagram、TikTok、YouTube Shorts知らない人に届きやすい仕組みがある
取引先・同業に信頼してもらいたいX、note、LinkedIn文章で考え方を伝えられる
一緒に働く人を探したいInstagram、X、note、LinkedIn働く様子と人柄が伝わる
既存のお客さんにまた来てほしいLINE公式アカウント、Instagram届けたい人に確実に届く
検索されたときの受け皿がほしい自社サイト、Googleビジネスプロフィール、X名前で調べた人が最初に見る場所

表を見て「うちは全部あてはまるかも」と思ったなら、それが普通です。どれも会社にとって大事だからです。

なので、絞り方はこうします。

「いま、社内でいちばん困っていること」はどれか。

売上が落ちているなら来店・購入。人が採れないなら採用。問い合わせが来ないなら認知。会社が今いちばん痛いところを選ぶと、社内の協力も得やすくなります。SNS運用は、担当者ひとりで完結する仕事ではありません。選んだ目的が、上司や他部署にとっても自分ごとであることが、地味に効いてきます。

社内で目的をすり合わせるときの資料の作り方は、企業SNS運用を社内で通す提案資料の作り方に整理してあります。

問い②:お客さんは、どこを見ているか

SNSの媒体を決める3つの問い(目的・お客さん・続けられるか)を並べて示した図
決め手は媒体の側ではなく、自社の側にある3つ。この3つが重なったところに残った1つから始めます。

2つ目は、お客さんが普段いる場所です。

ここでよくあるのが、「20代女性向けだからInstagramですね」という決め方です。大きくは外していないと思います。ただ、これは世間の平均の話であって、自社のお客さんの話ではありません。

自社のお客さんは、調べられます。しかも、無料で、今日できます。

方法1:直接聞く

いちばん確実です。レジで、電話で、納品のときに。「普段、お店の情報ってどこで見ますか?」と一言。10人に聞けば、だいたいの傾向は見えます。

BtoBなら、仲のいい担当者に「うちの業界の情報って、どこで見てます?」と聞いてみる。「そもそもSNSは見ていない、メールと展示会です」という答えも、立派な調査結果です。それが分かれば、SNSに時間を使いすぎない判断ができます。

方法2:問い合わせの経路を数える

直近30件の問い合わせが、どこから来たか。電話、メールフォーム、紹介、DM。すでに来ている道が太いなら、新しい道を作るより、その道を広げるほうが早いことがあります。

方法3:すでにある数字を見る

自社サイトのアクセス解析で、どこから来ているか。Googleビジネスプロフィールがあるなら、どんな言葉で検索されて見つかっているか。これらは、お客さんが自分の言葉で残していった記録です。数字の読み方は企業SNSのKPI|目的別に見る指標の選び方もあわせてどうぞ。

方法4:社員に聞く

意外と効きます。現場のスタッフは、お客さんとの雑談で「インスタで見ました」「息子に教えてもらって」といった話を聞いています。社内に、いちばん近い調査データがあります。

聞いた内容は、メモに残しておいてください。媒体を選んだ理由として、そのまま社内説明に使えます。 「お客様20人に聞いたところ、◯人がInstagramを日常的に見ていました」は、流行の話より何倍も強い根拠になります。

問い③:自社に、続けられる素材と時間があるか

3つ目が、いちばん現実的で、いちばん見落とされます。

どんなに相性のいい媒体でも、素材が出せなければ止まります。

自社を、この4つで見てみてください。

ここから、媒体は自然に絞れます。

出せるもの向いている媒体ひとこと
写真は撮れる。動画は難しいInstagram(フィード・ストーリーズ)、Googleビジネスプロフィール現場があるなら素材には困りません
動画に出られる人がいるTikTok、Instagramリール、YouTube Shorts知らない人に届く力はいちばん強い
写真も動画も出しにくい(BtoB・機密が多い)X、note、LinkedIn知識と考え方が素材になります
既存客への告知が中心LINE公式アカウント届けたい人に確実に届きます
使える時間が週30分しかないGoogleビジネスプロフィール+どれか1つ無理に増やすと、全部止まります

動画は避けたほうがいい、という話ではありません。 ただ、動画は撮影・編集・確認と工程が多く、1本あたりの時間が読みにくいのは事実です。週に使える時間が短いうちは、まず写真か文章で運用の型を作り、慣れてから動画を足すほうが、続く確率は上がります。

ここで自分の時間を正直に見積もるのが、後々いちばん効きます。実際の作業量の感覚は兼務でも回る「1日15分」企業SNS運用ルーティンが目安になります。

主要な媒体の「向く場面」早見表

3つの問いを通したうえで、最後に媒体側の性格を確認します。

細かい仕様や数字は、ここでは書きません。 各SNSの機能・料金・アルゴリズムは頻繁に変わるためです。ここで見てほしいのは、変わりにくい「性格」のほうです。

媒体向く場面素材気をつけること
Instagram商品・店舗・世界観を見せたい。BtoCの定番写真・短い動画見た目の統一に時間がかかりがち
X(旧Twitter)情報の速さ、人柄、BtoBの信頼づくり文章中心拡散が速いぶん、炎上も速い
TikTok知らない人に広く届けたい。若い層縦の短い動画動画を作り続ける体力が要る
YouTubeじっくり説明したい。長く残したい動画(長尺+Shorts)制作の負荷はいちばん高い
LINE公式アカウント既存のお客さんへの告知・再来店文章・画像配信数に応じた費用がかかる。送りすぎるとブロックされる
Googleビジネスプロフィール実店舗への来店。地域で探されている写真・短い文章口コミへの返信も含めて運用になる
Facebook経営者層・地域のつながり・BtoB文章・写真若い層には届きにくい
LinkedInBtoB、専門職の採用文章日本ではまだ業界による差が大きい
note考え方や背景をじっくり伝える。採用長めの文章拡散は自力。他媒体との併用が前提
ThreadsXと並行して軽く発信したい文章中心単独で使う理由は作りにくい
Pinterest探して保存される商材(インテリア・レシピ・アパレル)写真即効性は低い。長く効くタイプ

「うちの業界だとどれ?」の答えは、この表だけでは出ません。 表は候補を絞るためのもので、最後は問い①と②で決めてください。

各媒体を実際に始めるときは、それぞれの記事が使えます。X(旧Twitter)企業アカウント運用の基本Instagram企業運用の基本TikTok企業運用の始め方YouTube企業運用の続け方LINE公式アカウントと他SNSの役割分担Googleビジネスプロフィール投稿活用LinkedInとFacebookの向き不向きThreads(スレッズ)企業運用の始め方

各SNSの仕様・料金・機能は変わります。始める前に、必ず各プラットフォームの最新の公式ヘルプでご確認ください。

具体例:3つの会社で考えてみる

抽象的な話が続いたので、実際に通してみます。

例1:郊外の定食屋(従業員5人・SNS担当は店長の兼務)

選ぶのはGoogleビジネスプロフィール。次点でInstagram。

理由は明確です。「近所で昼ごはんの店を探している人」は、SNSではなく地図アプリを開いているからです。写真を足して、営業時間を正しくして、口コミに返信する。これが最短の道になります。Instagramは、余力ができてから写真の置き場として足せば十分です。

例2:産業機械の部品メーカー(従業員40人・広報担当が兼務)

選ぶのはX、またはnote。Instagramは採用向けに次点。

求職者は、応募する前に必ず会社名で検索します。 そのときに出てくるものが、求人票しかないのか、働いている人の様子が分かる何かがあるのか。ここで差がつきます。技術の話を書ける社員がいるのは、かなり大きな資産です。写真が出しにくくても、素材はあります。

例3:自社ECの食品メーカー(従業員15人・SNS担当は販促と兼務)

選ぶのはLINE公式アカウント。次点でInstagram。

リピートが目的なら、すでに買ってくれた人に確実に届く手段がいちばん効きます。同梱チラシに反応があるということは、届けば読んでくれる関係がすでにあるということです。ただし、配信数に応じて費用がかかる仕組みなので、送る回数は最初から決めておくのが安全です。

3つとも、「流行っているから」では選んでいません。 目的とお客さんと自社の素材から、逆に決まっています。

つまずきやすい選び方

現場でよく見かける、少しもったいない決め方です。責める話ではなく、知っていれば避けられるという話として読んでください。

「競合がやっているから」

競合と自社は、目的も体制も違います。競合が動画に3人かけているなら、それは真似する対象ではなく、避ける理由かもしれません。

「若い人に届けたいからTikTok」

方向は合っています。ただ、若い人に届けたい理由まで戻ってください。採用が目的なら、届く量より「誰に届くか」のほうが大事です。100人の学生より、5人の同業の若手に届くほうが効く場合もあります。

「全部やっておけば、どれか当たる」

これがいちばん多く、いちばん消耗します。5媒体を週1回ずつ更新するより、1媒体を週3回のほうが、たいてい成果は出ます。すでに複数を抱えているなら、複数SNSの「使い回し」と「作り分け」で負荷を下げる方法も見てみてください。

「上が決めたので」

これは担当者の責任ではありません。ただ、問い①と②のメモが手元にあれば、次の会議で材料として出せます。 「Xも進めますが、お客様20人に聞いた結果ではInstagramが多かったので、そちらに時間を寄せたいです」——決定をひっくり返す必要はありません。時間の配分を変える提案なら、通りやすいです。

増やすとき・やめるときの目安

1つ決めたあと、必ず来る話です。先に基準を作っておくと、その場の勢いで決めずに済みます。

増やしていいのは、この3つがそろったとき

  1. いまの1媒体が、3か月以上、決めた頻度で止まらずに回っている
  2. 素材を使い回せる(同じ写真・同じネタで、作り分けの手間が小さい)
  3. 増やしたぶんの時間が実際にある(誰かの残業でまかなわない)

やめる・休むを考えていいのは

やめる場合も、黙って止めないことだけ気をつけてください。最後に一言、「今後は◯◯(媒体名)でお知らせします」と投稿して、プロフィールにも書いておく。それだけで、フォロワーは置き去りになりません。

止まったアカウントを立て直すほうを選ぶなら、停滞した企業SNSアカウントの立て直しガイドに手順があります。手放していい作業の見極めは企業SNS運用でやめていい作業リストもどうぞ。

あなたへの影響

明日やること

  1. 紙かメモに、目的を1行だけ書く。 「平日の昼の来店を増やす」のように、社内の困りごとの言葉で。きれいな言葉にしなくて大丈夫です。
  2. お客さんに3人だけ聞いてみる。 「普段、お店の情報ってどこで見ますか?」の一言で十分です。20人はいりません。まず3人から。
  3. 今週この仕事に使える時間を、正直に書く。 週30分なら30分。少なく見積もったほうが、あとで楽になります。
  4. 上の3つを見比べて、候補を2つまで減らす。 ここまでで、たいてい絞れます。
  5. その2つのうち、素材が今すぐ出せるほうを選ぶ。 迷ったら「明日1本投稿できるか」で決めてください。
  6. 選んだ理由を3行でメモに残す。 目的/聞いた結果/使える時間。これが半年後、いちばん役に立ちます。

全部を明日やらなくて大丈夫です。2番だけでも、選び方がぐっと具体的になります。

決まったら、開設から初投稿までの流れは企業SNS運用の始め方に、1年をどう組み立てるかはひとり運用の企業SNS年間運用計画の立て方にまとめてあります。

使う媒体を1つに決めて、落ち着いた表情で最初の投稿の準備を始めている企業のSNS担当者の明るい情景

媒体を選ぶ仕事は、外から見ると一瞬で終わる作業に見えます。「Instagramにしました」の一行で報告が終わるからです。

でも実際は、目的を言葉にして、お客さんに聞いて、自分の時間を数えて、やらないほうを決める——社内の誰もやっていない整理を、ひとりでやっているわけです。その一行の裏側は、けっこうな仕事量です。

そして、選んだ答えが半年後に変わっても、それは間違いではありません。やってみないと分からないことを、実際にやって確かめただけです。むしろ、根拠なく続けているほうが、あとで戻りにくくなります。

覚えることは3つだけです。目的・お客さん・続けられるか。 次に「どのSNSがいいですか」と聞かれたら、この3つを聞き返せば大丈夫です。答えは、たいてい相手のほうが持っています。

チェックリスト(保存用・SNSの媒体を選ぶとき)

本記事は一般的な実務の整理です。各SNSの機能・料金・規約・アルゴリズムは頻繁に変わります。最終的な判断は、各プラットフォームの最新の公式情報と、自社の広報・法務方針でご確認ください。

よければ、こちらも

「うちはどれをやればいいんだろう」で止まったときに。まずは無理のない目標から決めてみるのもおすすめです。→ フォロワー目標の逆算ツール。企業SNS運用の実務ヒントは、メールでもお届けしています。よかったら受け取ってみてください。

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