人事から採用にもSNSを使えないかと相談され、何を投稿すればいいか考え込んでいる企業SNS担当者の情景

採用につながる企業SNS投稿の作り方|働く様子の見せ方と型

「うちのSNS、採用にも使えない?」

人事の担当者から、廊下やチャットで軽く相談される。 悪い話ではないのに、その瞬間、少しだけ体が固まりますよね。

いまでも投稿ネタは毎週ぎりぎりで回している。 そこに「採用」というもうひとつの目的が乗ってくる。 しかも、応募が来なければ「効果がなかった」と言われそうな気がする——。

でも、大丈夫です。 採用の投稿は、新しい企画を立ち上げる仕事ではありません。 いつもの投稿に、「働く様子」がひとつ写り込むようにするだけで、ちゃんと役目を果たします。

結論:採用につながる投稿は、次の3ステップで作ります。
届けたい相手を一人に絞る(「若い人」ではなく「異業種から転職を考えている20代後半の人」まで絞る)
働く様子を4つの引き出しから選ぶ(仕事の中身/一日の流れ/一緒に働く人/職場の環境)
4行の型で書く(場面 → 具体 → 正直なひとこと → そっと案内)
月に1〜2本、この形の投稿が混ざっていれば十分です。採用専用アカウントを作る必要も、毎回「募集中です」と言う必要もありません。

何が起きているのか——採用の投稿が書きにくい理由

採用の投稿が急に難しく感じるのは、あなたの企画力の問題ではありません。 ふだんの投稿とは、読む人の立場が違うからです。

いつもの投稿の読み手は、お客さんです。「この商品、良さそう」と思ってもらえればいい。 でも採用の投稿を見ている人は、自分がそこで働く姿を想像しながら読んでいます

つまり、読み手は「良さそう」を探しているのではなく、自分に合うかどうかを見極めようとしている。ここが、ふだんの投稿といちばん違うところです。

だから、いいことばかりを並べた投稿ほど、かえって手が止まります。 「アットホームな職場です」「風通しがいい会社です」——言葉としては悪くないのに、読み手にとっては何もわからない。判断材料がないから、想像ができないのです。

もうひとつ、現場で起きやすいのがこれです。採用の投稿は、成果が出るまでの時間が長い。商品の告知のように、その日のうちに反応が返ってくるものではありません。見た人が転職を考えるまでに、数か月かかることもあります。だから「反応が薄い=失敗」と早く判断してしまいがちなのですが、そう決めつけなくて大丈夫です。この点は後の「あなたへの影響」でもう一度触れます。

ステップ1:届けたい相手を一人に絞る

最初にやることは、投稿ネタ探しではありません。 誰に届いてほしいのかを、人事と一緒に一人まで絞ることです。

ここが曖昧なままだと、どんなに丁寧に書いても、内容がぼやけます。

絞り方は、人事に次の3つを聞くだけで足ります。長い打ち合わせは要りません。5分の立ち話で十分です。

  1. いま、どの職種をいちばん採りたいですか(全職種、ではなく1つ)
  2. その人は、いまどこで何をしている人ですか(同業からの転職/未経験/新卒/パート・アルバイト)
  3. 入社した人が「思っていたのと違った」と言いがちな点は何ですか

3つ目が、実はいちばん効きます。 ミスマッチが起きている点こそ、投稿で先に伝えておくと価値が出るところだからです。

例えば、こんなふうにまとまります。

届けたい相手:製造の現場職。未経験から転職を考えている20〜30代
ミスマッチが起きやすい点:「もくもく作業だと思って入ったが、実際はチームでの声かけが多い」

ここまで決まれば、投稿ネタは自然に見えてきます。この例なら、作業中に声をかけ合っている場面をそのまま出せばいい。盛る必要も、隠す必要もありません

ステップ2:見せるのは「働く様子」——4つの引き出し

相手が決まったら、次はネタです。 採用の投稿ネタは、大きく4つの引き出しに入っています。ゼロから考えず、上から順に引いてみてください。

採用につながる投稿ネタの4つの引き出しを、仕事の中身・一日の流れ・一緒に働く人・職場の環境の順に並べた図
採用の投稿ネタは4つの引き出しから引く。特別な企画ではなく、いつもの働く様子がそのまま素材になる。

引き出し1:仕事の中身

その職種の人が、実際に手を動かしている場面です。作業の手元、使っている道具、画面、書きかけのメモ。

「どんな仕事ですか」と聞かれたときに、言葉で説明すると長くなることほど、写真1枚のほうが早く伝わります。

引き出し2:一日の流れ

朝は何時に始まって、昼はどうしていて、夕方はどう終わるのか。 読み手がいちばん知りたいのに、求人票にはほとんど書かれていないのがここです。

「9:00 朝礼(5分で終わります)/10:00〜 各自の作業/12:00 休憩」——このくらいの粒度で十分伝わります。

引き出し3:一緒に働く人

同僚がどんな人たちなのかは、応募をためらう理由になりやすい部分です。 かしこまったインタビューにしなくて大丈夫です。休憩中の会話、教える側と教わる側のやりとり、そういう日常の一場面のほうが伝わります。

顔出しが難しいときは、後ろ姿や手元、名前を出さない形でも成立します。頼み方や同意の取り方は 社員紹介・舞台裏投稿のネタ化テンプレート社員が写る投稿の同意の取り方 にまとめています。

引き出し4:職場の環境

働く場所そのものです。作業場、事務所、休憩スペース、通勤の風景、駐車場。

地味に見えますが、通える距離か・座る場所はどんな雰囲気かは、応募を決める前にかなり気にされる部分です。人が写らないので、いちばん撮りやすい引き出しでもあります。

迷ったら、引き出し2(一日の流れ)から。4つの中でいちばん質問が多く、いちばん書かれていない情報です。

ステップ3:投稿文の型(4行)

ネタが決まったら、次は文章です。難しく考えず、この4行に当てはめてみてください。

① 場面    :いつ・どこの・何の場面かを一言で
② 具体    :数字や事実をひとつだけ入れる
③ 正直なひとこと:大変なところ・向き不向きも短く添える
④ そっと案内 :採用ページや募集の入口へ、押しつけずに

②と③が入ると、投稿は急に信用されます。逆に、この2つがないと「よくある求人広告」に見えてしまいます。

書き換えの例

書き換え前:

当社はアットホームな職場です!社員同士の仲も良く、未経験の方も安心して働ける環境です。一緒に働く仲間を募集中!

悪くはないのですが、読み手が判断できる材料が入っていません。

書き換え後:

朝の作業場です。8時半のミーティングは、その日の担当と注意点を確認して5分で終わります。
入社1年目の3人は、全員が異業種からの転職。工具の名前から覚えたそうです。
もくもく作業に見えて、実は「そこ、こうだよ」と声をかけ合う時間がけっこう多い職場です。静かに一人で進めたい方には、少し賑やかに感じるかもしれません。
仕事の中身は採用ページにまとめています。気になったらのぞいてみてください。

同じ職場の話でも、後者は読み手が「自分に合うか」を判断できます。 そして③で正直に書いていることが、①②の信頼を支えています。

「募集中です」は毎回言わなくていい

採用の投稿というと、募集を告知しなければと思いがちですが、実際に効くのは募集していない時期にも、働く様子が流れていることです。

人が動くタイミングは、こちらの募集時期とは関係なくやってきます。そのときに過去の投稿をさかのぼって見てもらえるかどうかが、応募の分かれ目になります。 だからこそ、月1〜2本ずつ静かに積み上げていくやり方が、いちばん現実的です。

気をつけたいこと(3つだけ)

採用の投稿には、ふだんの投稿にはない注意点があります。難しくはありませんが、ここだけは押さえておくと安心です。

1. 条件の数字は、求人情報と必ずそろえる

給与・勤務時間・休日・雇用形態といった条件を投稿に書くときは、人事が出している求人情報と食い違わないか確認してください。募集・採用に関する表示には守るべきルールがあり、投稿と求人票で内容がずれていると、入社後のトラブルにもつながります。迷ったら数字は書かず、「詳しくは採用ページで」に寄せるのが安全です。

2. 人が写る投稿は、目的まで伝えて同意を得る

「SNSに載る」だけでなく、採用の文脈で使われることまで本人に伝えます。社内向けの写真を採用目的に流用しない、という線引きも決めておくと安心です。

3. 断定した約束はしない

「絶対に働きやすい」「誰でも活躍できます」といった言い切りは、後から食い違いが生まれます。事実と、自社の考え方として書くほうが、結果的に信頼されます。

あなたへの影響

採用の投稿を引き受けると、SNS担当の仕事の見え方が少し変わります。

これまでの数字は、フォロワー数やエンゲージメントなど、社内で価値が伝わりにくい指標が中心だったと思います。でも採用は、社内で「人が足りない」と誰もが感じている課題です。そこに関われることは、SNSの仕事が社内で理解されるきっかけになります。

一方で、覚えておきたいこともあります。 応募数だけで評価されないよう、最初に握っておくことです。

応募が入る理由は、求人サイト・待遇・タイミングなど複数が重なった結果で、SNS単独の成果として切り分けるのは現実的ではありません。ですから人事とは、こう伝えておくとお互いに楽になります。

「応募数そのものはSNSだけでは動かせないので、採用ページへのアクセスと、面接で『SNSを見た』と言われた件数を一緒に見せてください」

見る数字を先に決めておけば、「効果がなかった」という曖昧な評価から自分の仕事を守れます。計測の入口は SNS経由の成果をUTMで計測する が参考になります。

明日やること

一度に全部やらなくて大丈夫です。明日はここまでで十分です。

  1. 人事に3つだけ聞く(採りたい職種/その人はいまどこにいる人/入社後のギャップ)
  2. 4つの引き出しから、いちばん撮りやすい1つを選ぶ(迷ったら「一日の流れ」)
  3. 4行の型で、下書きを1本だけ書いてみる
  4. 人が写るなら、本人に「採用の投稿で使わせてほしい」と伝えて同意をもらう

投稿は来週でも構いません。今日は、人事に聞く3つをメモに書くだけで前に進みます。

チェックリスト(保存用・採用につながる投稿)

初回は、上4つだけできれば合格です。下の項目は、2本目・3本目で少しずつ足していけば大丈夫です。

企画するとき

書くとき

投稿する前

採用につながる投稿を無理なく続けられるようになった担当者が、人事の同僚と一緒に投稿内容を確認している前向きな情景

採用の投稿は、うまく見せようとするほど書けなくなります。でも、読み手が知りたいのは「すごい会社かどうか」ではなく、「自分がここで働いている姿を想像できるか」だけです。あなたが毎日見ている、あのいつもの朝の景色は、外の誰かにとっては初めて見る大事な情報です。今日、人事に3つ聞くと決められたなら、もう最初の1本は動き始めています。

よければ、こちらも

「次の投稿、何にしよう」と迷ったときに。企業SNS運用の実務ヒントを、メールでもお届けしています。よかったら受け取ってみてください。

関連用語