
企業SNSの失敗談投稿の作り方|中の人の「やらかし」を学びに変える型
新商品の写真を撮り終えて、パソコンに取り込んでみたら、全部ピントが背景に合っていた。 撮り直しながら、ふと思う。「この失敗、ちょっと面白いかも。投稿にできないかな」
でも、すぐにブレーキがかかります。会社のアカウントで「失敗しました」なんて書いていいのか。頼りない会社だと思われないか。上司に何か言われないか——。その迷い、とても自然なものです。
実は、中の人の小さな失敗と、そこからの気づきは、企業アカウントの投稿の中でも親しみを持ってもらいやすい話のひとつです。ただし、何でも出していいわけではありません。今日は、失敗談を「読む人の役に立つ投稿」に変える型と、出していい失敗・やめておく失敗の線引きを、一緒に整理していきます。
結論:失敗談は「失敗・気づき・おすそわけ」の3点セットで書けば、笑い話で終わらず、読む人の役に立つ投稿になります。
① 出すのは「自分の、小さな、もう直った」失敗だけにする
② 失敗そのものより「気づき」に文字数を使う
③ 最後に、読む人が持ち帰れる「おすそわけ」を1つ置く
大きな失敗を探さなくて大丈夫です。今週の「あっ」をひとつ思い出すところから始められます。
何が起きているか:完璧な投稿ばかりだと、人が見えにくい
企業アカウントの投稿は、どうしても「きちんとした情報」が並びます。それは大切なことですが、整った投稿ばかりが続くと、見る人からはその向こうにいる人の姿が見えにくくなります。
小さな失敗の話は、その壁を少しだけ低くしてくれます。「中の人も同じところでつまずくんだ」「ちゃんと直して、次に生かしているんだ」——そう感じてもらえると、アカウントへの親しみや信頼につながることがあります。失敗談がよく読まれやすいのは、うまくいった話より、つまずいた話のほうが自分に重ねやすいからです。
一方で、失敗談には気をつけたい面もあります。
- 会社の信頼に関わる失敗(品質・安全・お客様対応のミス)を軽く書くと、「この会社、大丈夫?」という不安を生むことがあります。
- 自虐が他の人を巻き込むことがあります。自分を笑ったつもりでも、同じ立場の読者が傷つく場合があります。
- 他の人の失敗を勝手にネタにすると、本人が嫌な思いをすることがあります。
つまり、失敗談投稿は「何を出すか」の選び方で、ほぼ決まります。
具体例:出していい失敗・やめておく失敗の線引き
迷ったときは、次の3つの条件で考えます。3つともそろっている失敗だけを投稿の候補にします。
- 自分の失敗であること(同僚の話なら、本人の了承があること)
- 小さな失敗であること(お客様や取引先に迷惑がかかっていない)
- もう直った失敗であること(いま対応中・謝罪中のものではない)
| 出していい失敗の例 | やめておく失敗の例 |
|---|---|
| 商品写真のピントが全部背景に合っていた | 商品の不具合・異物混入・表示ミス |
| ハッシュタグをつけ忘れて、あとから追加した | お客様への対応ミスや、返信の行き違い |
| 撮影用に並べた商品が倒れて、並べ直しが3回になった | 個人情報や社外秘が写り込んだ件 |
| ネタが浮かばず、30分画面の前で固まった | いまも謝罪・対応が続いている誤投稿 |
| 動画の撮影で、最後まで録画ボタンを押していなかった | 他の社員の失敗(本人の了承がないもの) |
左の列に共通するのは、読む人が「わかる、それ」と笑えて、誰も困っていないことです。右の列は、会社として誠実に対応すべきことなので、ネタにはしません。誤投稿をしてしまったときの対応は、企業SNS誤投稿の対応で順番を整理しています。
投稿の型:「失敗・気づき・おすそわけ」の3ステップ
失敗談投稿は、次の3ステップで組み立てます。

| ステップ | 書くこと | 文字数の目安 |
|---|---|---|
| ① 失敗 | 何が起きたかを、短く・具体的に | 全体の2〜3割 |
| ② 気づき | なぜそうなったか、どう直したか | 全体の4〜5割 |
| ③ おすそわけ | 読む人が明日使えるひとこと | 全体の2〜3割 |
ポイントは、②の気づきにいちばん文字数を使うことです。失敗の描写を長くすると、笑い話や反省文で終わってしまいます。「どう直したか」まで書くと、読む人には「この会社はちゃんと次に生かす」という安心として伝わります。
たとえば、写真のピントの失敗なら、こんな形になります。
【①失敗】新商品の写真を20枚撮って取り込んだら、全部ピントが背景の壁に合っていました。
【②気づき】スマホは画面をタップした場所にピントが合うので、撮る前に商品を一度タップするようにしました。それだけで、撮り直しがなくなりました。
【③おすそわけ】商品撮影の前に「商品をトン」とひと押し。同じことで困っている方の参考になればうれしいです。
ほかの失敗でも、型はそのまま使えます。
| 失敗 | 気づき | おすそわけ |
|---|---|---|
| 動画の録画ボタンを押し忘れていた | 撮り始めに画面の録画中の表示を見る、と決めた | 「撮る前に、赤い印をひと目」 |
| ネタが出ず30分固まった | 先週の問い合わせを見返したら、3本分のネタがあった | 「迷ったら、最近聞かれたことから」 |
| 並べた商品が倒れて並べ直し3回 | 背の高い商品を後ろ、低い商品を前に置いたら安定した | 「並べるときは、背の順で」 |
③のおすそわけは、「〜しましょう」と教える言い方より、「〜すると楽でした」と自分の体験として差し出す言い方のほうが、やわらかく届きます。書き出しの1行で手を止めてもらう工夫は、反応が伸びる投稿文の書き方も参考になります。
自虐の線引き:笑っていいのは「自分の行動」まで
失敗談は、自虐と隣り合わせです。次の線を意識しておくと、読む人を置き去りにせずにすみます。
- 笑っていいのは「自分の行動」:「ボタンを押し忘れた」「ピントを外した」など、直せる行動の話。
- 笑わないのは「人の属性」:体型・年齢・性別・出身など、本人が変えられないことを笑いにしない。自分のことでも、同じ立場の読者を巻き込みます。詳しくは企業SNSの表現チェックにまとめています。
- 会社や商品を下げない:「うちの会社はダメで」「どうせ売れない商品ですが」のような言い方は、謙遜のつもりでも、働く仲間やお客様の気持ちを下げてしまいます。
失敗談の目的は「自分を下げること」ではなく、「読む人と同じ目線に立つこと」です。どこまで人柄を出すかに迷ったら、「中の人」の人柄を出す投稿と、出しすぎないラインの引き方も見てみてください。
出す前に:ひとり判断にしない
失敗談は、書いた本人には「よくある話」に見えても、ほかの人から見ると気になる点が隠れていることがあります。次のことだけは、出す前に確かめておくと安心です。
- 同僚が登場する場合は、本人に「この話、投稿してもいいですか?」と聞く。顔や名前を出さなくても、社内の人には分かることがあります。
- 上長か、もう一人に見てもらう。とくに初めて失敗談を出すときは、「会社の信頼に関わる話に見えないか」を一緒に確認します。
- 写真に余計なものが写っていないか。失敗の「証拠写真」を載せるときは、背景の書類や画面に注意します。
迷ったら、いったん下書きに置いて翌日に読み返すだけでも、落ち着いて判断できます。投稿前の確認全体は企業SNS投稿前チェックリストで整理できます。
あなたへの影響
- 「今日は投稿することがない」という日にも、自分の体験から1本作れるようになる。
- 整った情報だけでは伝わらなかった、アカウントの向こうにいる人の姿が伝わりやすくなる。
- 失敗を「気づき」として書く習慣が、そのまま自分の運用の振り返りにもなる。
- 線引きを決めておくことで、「これは出していいのかな」と迷う時間が減る。
明日やること(10分でできる範囲)
- この1〜2週間の仕事で「あっ」と思った小さな失敗を、3つメモに書き出す。
- そのうち「自分の・小さな・もう直った」の3つがそろうものを1つ選ぶ。
- 「失敗・気づき・おすそわけ」の3行で下書きを作る。気づきの行をいちばん長くする。
- 下書きを上長か同僚に見せて、「これ、出しても大丈夫そうですか?」と聞いてみる。
1本目は、撮影や作業の失敗がいちばん書きやすいです。笑いを取ろうとしなくて大丈夫。正直に書いた気づきは、それだけで誰かの役に立ちます。
チェックリスト
- 選ぶとき
- 「自分の・小さな・もう直った」失敗を選んだ
- お客様・取引先に迷惑がかかった話ではない
- 品質・安全・個人情報に関わる話ではない
- いま対応中・謝罪中の件ではない
- 書くとき
- 「失敗・気づき・おすそわけ」の3つがそろっている
- 失敗の描写より、気づきに文字数を使った
- 笑っているのは「自分の行動」で、人の属性ではない
- 会社や商品を必要以上に下げる言い方をしていない
- 出す前に
- 同僚が登場する場合は、本人の了承を取った
- 上長か、もう一人に読んでもらった
- 写真の背景に、書類や画面が写り込んでいない
全部を毎回でなくて大丈夫です。まずは太字の3つから。
最後に
失敗を投稿にしていいのか迷ったのは、あなたが会社のアカウントを大切に預かっているからです。その慎重さは、失敗談投稿でもいちばん頼りになる感覚です。
うまくいかなかった日の小さな気づきも、ちゃんと誰かの役に立つ話です。明日、今週の「あっ」をひとつだけメモに書き出してみましょう。

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