
SNSで伝える商品ができるまで|ものづくりストーリー投稿の作り方
新商品の発売日。きれいに撮った商品写真に「本日発売です」と添えて投稿した。 反応は、いつもの宣伝投稿と同じくらい。 でも、あなたは知っています。開発担当が何度も試作をやり直したことも、素材を決めるまでに何週間も悩んだことも。
「あの話、ちゃんと伝えられたらいいのに」——そう思いながら、次の投稿の準備に追われてしまう。その気持ち、とてもよく分かります。
完成品の写真だけでは、その商品がどんな思いで作られたのかまでは伝わりにくいものです。けれど、できるまでの道のりには、見る人が「応援したくなる」理由がたくさん詰まっています。今日は、商品ができるまでの舞台裏を、無理なく投稿にしていく「ものづくりストーリー投稿」の作り方を一緒に整理していきます。
結論:完成した日に1回だけ伝えるのではなく、できるまでを小分けにして、発売前から少しずつ出していきましょう。
① 商品ができるまでを「きっかけ・試作・こだわり・完成」の4つの場面に分ける
② 1つの投稿には「人・迷い・こだわり」のどれか1つだけを入れる
③ 出す前に「社外秘・取引先・写っている人」の3つを確かめる
大きな企画にしなくて大丈夫です。開発担当に10分話を聞くところから始められます。
何が起きているか:完成品だけだと「比べられる側」になりやすい
完成品だけを見た人は、どうしても価格や見た目、ほかの商品との違いで判断します。それ自体は自然なことですが、宣伝投稿が続くと、タイムラインの中では「よくある商品紹介」のひとつとして流されやすくなります。
一方で、作られる過程を知っている商品には、見る人が自分だけが知っている背景を持てます。「あの試作の話の商品だ」「あの人が悩んでいたやつだ」——そう思い出してもらえると、発売日の投稿にも反応しやすくなることがあります。
それに、企業アカウントにとって「ものづくりの舞台裏」は、その会社にしか書けないネタです。トレンドや他社のまねに頼らなくても、自社の中にすでにある話で投稿が作れます。ネタ探しに悩む「中の人」にとっても、心強い引き出しになります。
具体例:ものづくりストーリーを4つの場面に分ける
商品ができるまでを1本の長い話にしようとすると、書くほうも読むほうも疲れてしまいます。そこで、次の4つの場面に分けて、1場面ずつ投稿にしていきます。

| 場面 | 伝えること | 開発担当に聞く質問 |
|---|---|---|
| きっかけ | なぜこの商品を作ろうと思ったか | 「最初に作ろうと思ったのは、どんなときでしたか?」 |
| 試作 | うまくいかなかったこと、やり直したこと | 「途中でいちばん困ったのは、どこでしたか?」 |
| こだわり | 素材・工程・形で、譲れなかったところ | 「ここだけは変えなかった、というところはありますか?」 |
| 完成 | できあがったときの気持ち、届けたい相手 | 「どんな人に使ってほしいですか?」 |
いちばん反応が集まりやすいのは、意外と「試作」の場面です。うまくいった話より、うまくいかなかった話のほうが、人柄や真剣さが伝わります。「3回目の試作で、やっと色が決まりました」というひとことには、完成品の写真だけでは出せない温度があります。
業種が違っても、4つの場面はそのまま使えます。
| 業種 | きっかけ | 試作 | こだわり | 完成 |
|---|---|---|---|---|
| 食品・お菓子 | お客様の「もう少し甘さ控えめなら」の声 | 焼き加減を変えた試作の食べ比べ | 粉や素材の選び方 | 焼き上がった初回分を箱詰めする朝 |
| 製造業・部品 | 現場から上がった「ここが使いにくい」 | 試作品の形を何度も変えた跡 | 仕上げの工程で手をかけているところ | 初めて出荷する日の検品の様子 |
| サービス・新プラン | 問い合わせで何度も聞かれた質問 | 社内で試したときにつまずいた点 | 説明の言葉や手順で工夫したところ | 最初のお客様に案内できた日 |
| 小売・オリジナル商品 | 売り場で感じた「これがあれば」 | サンプルの色や大きさの比較 | パッケージで悩んだところ | 店頭に並べた最初の日 |
投稿文の型:1投稿に「人・迷い・こだわり」を1つだけ
1つの投稿に全部を詰め込むと、どれも印象に残りにくくなります。1投稿に1つだけ、次のどれかを入れるのが基本です。
- 人:誰が作っているか(顔出しが難しければ、手元や後ろ姿でも十分伝わります)
- 迷い:どこで悩んだか、何をやり直したか
- こだわり:何を譲らなかったか
場面ごとに、コピーして使える型を置いておきます。
- きっかけ:「この商品は、(お客様・現場)の『(ひとこと)』から始まりました。」
- 試作:「試作〇回目。(うまくいかなかったこと)で、もう一度やり直しています。」
- こだわり:「(担当)が最後まで変えなかったのは、(部分)です。理由は(ひとこと)。」
- 完成:「〇か月かけて、ようやく形になりました。(届けたい相手)に使ってもらえたらうれしいです。」
書き出しの1行で手を止めてもらう工夫は、反応が伸びる投稿文の書き方にもまとめています。写真が「途中の作業」になる場合の撮り方は、店舗・現場の写真を投稿ネタにするコツの「手元・途中・道具」の見方がそのまま使えます。
出すタイミング:発売前から少しずつ、完成で回収する
ものづくりストーリーは、発売日より前に出し始めると力を発揮します。発売の数週間前から「きっかけ」「試作」「こだわり」を1本ずつ出し、発売日の「完成」で回収する流れです。
たとえば、発売の3週間前から週1本ずつ出すと、次のようになります。
| 時期 | 出す場面 | 投稿の例 |
|---|---|---|
| 発売3週間前 | きっかけ | 「お客様のこのひとことから、新しい商品づくりが始まりました」 |
| 発売2週間前 | 試作 | 「試作3回目。まだ色が決まりません」 |
| 発売1週間前 | こだわり | 「最後まで変えなかったのは、持ち手の太さです」 |
| 発売日 | 完成 | 「ようやく完成しました。本日から販売を始めます」 |
すでに発売済みの商品でも大丈夫です。「定番商品ができるまで」として振り返る形にすれば、いつでも始められます。発売前後の告知全体の組み立ては新商品の発売告知をSNSで組み立てる、シリーズとして続ける工夫はSNSの連載企画を続けるコツが参考になります。
出す前に:社外秘・取引先・写っている人を確かめる
舞台裏の投稿は、ふだん外に出ていない情報を扱うぶん、出す前の確認がとても大切です。次の3つだけは、開発担当や上長と一緒に確かめておくと安心です。
- 社外秘:配合・レシピ、図面、原価、仕入れ値、まだ決まっていない発売日や価格が写っていないか、書いていないか。未確定のことは「予定」と書くか、確定してから出します。ホワイトボードやPC画面の写り込みはSNS投稿の写り込みチェックで確認できます。
- 取引先:仕入れ先や協力工場の名前・ロゴを出す場合は、先方に了承を取っておきます。迷ったら名前を出さずに「長くお付き合いのある工場さん」のように書けば十分伝わります。
- 写っている人:開発担当や製造スタッフの顔が写るなら、本人に投稿してよいか確認を。同意の取り方は社員が写る投稿の同意の取り方にまとめています。
もうひとつ、ストーリーを盛り上げようとして「業界初」「いちばんおいしい」のような根拠を示せない言い切りを使わないことも大切です。舞台裏の投稿は、事実をそのまま書くだけで十分に伝わります。言い回しに迷ったら企業SNSのNG投稿・失敗例まとめも見てみてください。
あなたへの影響
- 「新商品の投稿が宣伝っぽくなる」という悩みが減り、発売日までの投稿ネタが自然にそろう。
- 開発担当や現場の人の仕事が、外に届く形で残っていく。社内の協力も得やすくなる。
- 見る人が商品の背景を知ることで、発売日の投稿にも気持ちを向けてもらいやすくなる。
- ほかの会社には書けない、自社ならではの投稿が増えていく。
明日やること(10分でできる範囲)
- 次に出る商品(または定番商品)を1つ決める。
- 開発担当に、表の「聞く質問」から1つだけ聞いて、答えをメモする。
- そのメモから、場面の型に当てはめて1投稿分の下書きを作る。
- 社外秘・取引先・写っている人を確かめて、開発担当に「これ、出しても大丈夫ですか?」と見てもらう。
1本目は「きっかけ」がいちばん書きやすいです。完璧なストーリーに仕上げなくて大丈夫。1場面ずつ積み重ねていけば、それがそのまま物語になります。
チェックリスト
- 企画するとき
- 商品ができるまでを「きっかけ・試作・こだわり・完成」に分けた
- 開発担当に話を聞く時間を10分もらった
- 発売日から逆算して、出す順番を決めた
- 書くとき
- 1投稿に「人・迷い・こだわり」のどれか1つだけを入れた
- うまくいかなかった話も、ひとつ入れてみた
- 根拠を示せない「初」「いちばん」などの言い切りを使っていない
- 出す前に
- 配合・図面・原価・未確定の発売日などの社外秘が、写真にも文章にも出ていない
- 取引先の名前やロゴを出す場合は、先方の了承を取った
- 写っているスタッフに、投稿してよいか確認した
- 開発担当に投稿文を見てもらった
全部を毎回でなくて大丈夫です。まずは太字の3つから。
最後に
「新発売です」の1枚で終わってしまう投稿にもどかしさを感じていたのは、あなたがその商品の裏側にある時間を知っていたからです。それは、社内でいちばん近くで商品づくりを見てきた人の感覚です。
試作をやり直した日も、素材に迷った日も、ちゃんと伝える価値のある物語です。明日、開発担当にひとつだけ「最初はどんなきっかけでしたか?」と聞いてみましょう。

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