
数字・データを使った投稿の作り方|実績や調査を盛らずに伝える見せ方
「今期、問い合わせが前年の1.5倍になったから、それSNSでも出しておいて」 上司にそう言われて投稿を作ってみたものの、「お問い合わせ件数が前年比150%になりました!」と書いた画面を見て、なんとなく手が止まる。うれしい数字のはずなのに、これを見た人が何を感じるのか、自分でもよく分からない——そんな経験はありませんか。
数字は、うまく使えば言葉よりも速く伝わります。ただ、出し方を少し間違えると「で、それが私に何の関係が?」と流されてしまったり、反対に「盛っていない?」と疑われてしまったりもします。
数字を前に手が止まるのは、あなたが読む人にとっての意味を考えているからです。その感覚は、そのまま良いデータ投稿の出発点になります。今日は、実績やアンケート結果を盛らずに届ける見せ方を、一緒に整理していきます。
結論:数字・データを使った投稿は、次の4つで組み立てます。
① 数字はひとつに絞る(1投稿で伝える数字は、いちばん伝えたい1つだけ)
② 身近なものにたとえる(「1日あたり」「〇人に1人」など、読む人の生活の単位に置き換える)
③ 出どころを添える(いつ・誰に・何を数えた数字なのかを短く)
④ 盛っていないか確かめる(%と実数、比べる相手、グラフの見え方)
数字そのものより、「その数字の向こうに誰がいるか」が見えたとき、データ投稿は読まれます。
何が起きているか:数字の投稿が「流される」理由
社内では大きなニュースの数字も、タイムラインで見る人にとっては、意味をつかむのにひと手間かかる情報です。反応が薄くなる投稿には、だいたい次のような共通点があります。
- 数字が多すぎる:「売上120%、新規顧客80社、満足度92%」と並ぶと、どれを覚えればいいのか分からなくなる。
- 数字だけで、意味が書かれていない:「前年比150%」と言われても、それが多いのか少ないのか、読む人には判断する材料がない。
- 出どころが見えない:「満足度95%」が、何人に・いつ・どう聞いた結果なのか分からないと、広告の決まり文句に見えてしまう。
- 主語が会社だけ:「当社の実績」として書くと、読む人の居場所がなくなる。
反対に、よく読まれるデータ投稿は、数字が読む人の暮らしや気持ちとつながっています。「1日あたり約3個」「10人のうち8人が」と言われると、急に景色が浮かびますよね。
ここは現場でも迷いやすいところです。ひとつずつ見ていけば大丈夫です。
数字・データを使った投稿を組み立てる4つの手順

手順1:数字はひとつに絞る
まず、1投稿で伝える数字をいちばん伝えたい1つに絞ります。ほかの数字は、別の日の投稿に回せば大丈夫です。数字がたくさんあるのは、ネタがたくさんあるということでもあります。
絞るときは、「この数字で、読む人に何を感じてほしいか」を先に決めると迷いにくくなります。
- 「たくさんの人に選ばれている」と伝えたい → 利用者数・販売数
- 「満足してもらえている」と伝えたい → アンケート結果・リピート率
- 「ていねいに作っている」と伝えたい → 工程の数・検品の回数・かけた日数
意外と反応が良いのが、3つ目の「手間の数字」です。「この椅子は、仕上げの磨きだけで3日かけています」のような数字は、自慢よりも物語として受け取られやすいです。
手順2:身近なものにたとえる
次に、選んだ数字を読む人の生活の単位に置き換えます。大きな数字ほど、置き換えると伝わります。
- 「年間1,095個販売」→「毎日、だいたい3個ずつ誰かの手に渡っています」(1,095÷365=3)
- 「アンケート回答40人中34人が満足」→「10人のうち、およそ8〜9人が『満足』と答えてくださいました」(34÷40=85%)
- 「問い合わせが前年の120件から180件に」→「去年より、月に5件ほど多くご相談をいただくようになりました」(60件÷12か月=5件)
置き換えたあとに、その数字の向こうにいる人をひとこと添えると、さらに温かくなります。「毎日3個」なら「そのうち1個は、きっと誰かへの贈り物です」のように。ただし、確かめていないことを事実のように書くのは避けて、想像は想像として書きます。
1枚目の書き出しで止まってもらう考え方は、反応が伸びる投稿文の書き方でもくわしく整理しています。
手順3:出どころを添える
数字には、いつ・誰に・何を数えたのかを短く添えます。長い注釈は要りません。1行あれば十分です。
- 自社のアンケート:「※2026年9月、店頭でご回答いただいたお客様40人へのアンケートより」
- 自社の実績:「※2025年10月〜2026年9月の当店オンラインショップでの販売数」
- 公的な統計や他社の調査:「※〇〇省『〇〇調査』(〇年)より」のように、発表元と調査名、年を書く
出どころがあると、読む人は安心して数字を受け取れます。そして何より、あなた自身が数字を守れるようになります。あとから「その数字、どこから?」と聞かれても、落ち着いて答えられますよね。
公的な統計や他社の調査を使うときは、元の資料をいちばん新しい版で確認してから使います。グラフや図表をそのまま画像で貼るのは避けて、必要な数字だけを引用し、自分で作った図で見せると安心です(引用の考え方は企業SNSの著作権・肖像権チェックにまとめています)。
手順4:盛っていないか確かめる
最後に、数字が実際より大きく見えていないかを確かめます。悪気がなくても、見せ方しだいで盛って見えることがあります。
- %と実数をセットで考える:「前年比200%」でも、2件が4件になっただけということもあります。実数が小さいときは、%より実数のほうが誠実に伝わります。
- 比べる相手をはっきりさせる:「2倍」「〇%アップ」は、何と比べたのかを書きます(前年同月・前の商品・導入前など)。
- グラフの縦軸は0から:棒グラフの縦軸を途中から始めると、わずかな差が大きな差に見えてしまいます。
- 回答者の数が少ないときは、そのまま書く:10人中9人の「90%」は、人数を添えると誤解が生まれにくくなります。
- 四捨五入の向きをそろえる:84.6%を「約85%」はOK。「ほぼ9割」と丸めるのは、少し言いすぎです。
言葉と表記で気をつけたいこと
データ投稿は、事実をそのまま書くことが基本なので、心配しすぎなくて大丈夫です。ただ、次の点だけは投稿前に確かめておくと安心です。
- 「No.1」「業界初」「日本一」は、根拠を確かめてから:順位や最上級の表現は、客観的な調査とその条件(調査機関・対象・期間など)がそろっていないと、景品表示法上の問題につながるおそれがあります。根拠があっても、条件を一緒に表示するのが基本です。迷ったら、順位ではなく「〇人の方に選んでいただきました」と実数で書けば十分伝わります。
- 「満足度〇%」は、聞き方も含めて書く:「満足」「やや満足」を合わせた数字なら、そう書きます。
- 効果を約束する表現にしない:「〇%の方が効果を実感」のような数字は、商品によっては薬機法などの規制に関わることがあります。健康・美容に関わる商品のデータは、法務への確認依頼の進め方を参考に、早めに相談しておくと気持ちが楽になります。
- 社外に出してよい数字か確かめる:売上・取引社数・顧客数などは、社内で公開範囲が決まっていることがあります。出す前に、上司か数字の持ち主にひとこと確認します。
キャンペーンの告知と数字を組み合わせるときの考え方は、SNSキャンペーンの応募規約と景表法も参考になります。
具体例:数字を使った投稿文
たとえば、手づくりのジャム屋さんが、1年間の販売数を投稿する場合です。
△ 年間販売数1,095個突破!たくさんのご購入ありがとうございます!
○ この1年で、いちごジャムは1,095個、お客様のもとへ旅立っていきました。
1日あたり、ちょうど3個です。
朝のトーストに、お弁当のサンドイッチに、手みやげに。
毎日3つの食卓に並んでいると思うと、明日の仕込みにも力が入ります。
※2025年10月〜2026年9月の店頭とオンラインショップの合計
使っている数字は「1,095個」と、それを置き換えた「1日3個」だけです。それでも、読む人には1年の積み重ねがちゃんと伝わります。
アンケート結果なら、こんな形です。
先月、店頭でお客様40人にアンケートにご協力いただきました。
「また来たい」と答えてくださったのは、40人中34人でした。
残りの6人の方からいただいたご意見で多かったのは、「お昼の待ち時間が長い」でした。
来月から、お昼どきのレジを1台増やします。
※2026年9月、店頭アンケート(回答40人)より
うれしい数字だけでなく、届かなかった声とそれへの答えも添えると、数字への信頼がぐっと増します。
画像で見せるなら、数字を大きく1つだけ置き、出どころを小さく下に添える形がシンプルです。複数の数字を見せたいときは、カルーセル投稿の構成のように1枚に1つずつ分けると読みやすくなります。
あなたへの影響
- 社内にある数字を、ためらわずに投稿ネタにできる型が手元に残る。
- 数字が「会社の自慢」ではなく、お客様との関係を伝える材料になる。
- 出どころを添える習慣で、上司や法務への確認がスムーズになる。
- 1つの集計から、何本もの投稿ネタが生まれる。
明日やること(15分でできる範囲)
- 社内にある数字を、思いつくだけ3つ書き出す(販売数・アンケート・手間の数字など。月次レポートの中にもきっとあります)。
- その中から、読む人に「へえ」と思ってもらえそうなものを1つ選ぶ。
- 選んだ数字を「1日あたり」「〇人に1人」など、身近な単位に置き換えてみる。
- いつ・誰に・何を数えたのか、出どころを1行で書いてみる。
ふだんの数字の集め方は、SNSの週次数字チェックや企業SNSの月次レポートの流れに乗せておくと、ネタ探しも兼ねられます。
チェックリスト
- 組み立て
- 1投稿で伝える数字を、ひとつに絞った
- 数字を、読む人の生活の単位に置き換えた(1日あたり・〇人に1人など)
- 数字の向こうにいる人が、ひとこと見えるようにした
- 出どころ・正確さ
- いつ・誰に・何を数えたのかを、1行で添えた
- 置き換えた数字を、電卓でもう一度計算した
- %だけでなく、実数でも確かめた(実数が小さいときは実数で書いた)
- 「2倍」「〇%アップ」は、比べる相手を書いた
- グラフの縦軸を0から始めた
- 表現・社内確認
- 根拠のない「No.1」「業界初」「日本一」を使っていない
- 効果を約束するような数字の使い方をしていない
- 社外に出してよい数字か、上司か数字の持ち主に確認した
- 他社の調査や統計は、最新の元資料を確認し、出典を書いた
全部を一度にでなくて大丈夫です。まずは太字の3つから。
最後に
数字は、冷たいものに見えて、じつはたくさんの人の行動が集まったものです。「1,095個」の向こうには、1,095回の「これにしよう」があります。その重みを知っているのは、毎日の投稿と集計を続けているあなたです。
どの数字を使うか迷ったら、「この数字で、いちばん喜んでほしいのは誰だろう」と考えてみてください。まずは手元にある数字をひとつ、身近な単位に置き換えてみるところから始めてみましょう。

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