
企業SNSの偽アカウント対応|見つけたときの通報と4つの手順
「御社のアカウントから『プレゼントに当選しました』ってDMが来たんですが、これ本物ですか?」
フォロワーさんからそんなメッセージが届いて、見に行ってみると——自社のロゴ、自社の名前、ほとんど同じプロフィール。でも、自分は送った覚えがない。
その瞬間、心臓がきゅっとしますよね。「うちの管理が甘かったのかな」と自分を責めそうになるかもしれません。
でも、まず伝えたいことがあります。なりすましの偽アカウントは、こちらがきちんと運用していても、外で勝手に作られてしまうものです。あなたのミスで起きたことではありません。そして、見つけたときにやることの順番は、ちゃんと決まっています。
結論:自社の偽アカウント(なりすまし)を見つけたら、次の4つの手順で進めれば大丈夫です。
① 記録:消される前に、画面・URL・日時を残す
② 共有:上司と、必要なら法務・広報の責任者へすぐ知らせる
③ 通報:各SNSの「なりすまし」の報告窓口から通報する
④ 注意喚起:公式アカウントと公式サイトで「本物はこちら」とお知らせする
慌てて相手に直接メッセージを送ったり、強い言葉で反応したりする必要はありません。順番どおり、一つずつ進めましょう。
なお、自社アカウント自体を乗っ取られないための設定(2段階認証や権限の整理)は、企業SNSの乗っ取り対策|なりすましを防ぐ最初のアカウント設定にまとめています。この記事は、外に作られた偽アカウントを見つけたあとの動き方の話です。
何が起きているか:偽アカウントは「信頼」を借りに来る
なりすましの偽アカウントは、たいてい会社の名前やロゴが持っている信頼を借りて、フォロワーさんに近づこうとします。よく見かける形は、次のようなものです。
- 当選詐欺型:「キャンペーンに当選しました。受け取りには送料のお支払いを」と、DMで外部のサイトへ誘導する
- 問い合わせ横取り型:本物そっくりの名前で、問い合わせてきたお客様に返信し、個人情報を聞き出す
- 評判を下げる型:会社のふりをして、乱暴な発言や不適切な投稿をする
どの形でも、困るのはフォロワーさんが本物と見分けられないことです。だから対応のゴールは「偽アカウントを消すこと」だけではありません。お客様に被害が出ないようにすること、そして本物がどれかをはっきり示すこと。この2つを一緒に進めていきます。
見分けるときのポイントは、ユーザー名(@から始まるID)です。表示名やアイコンは同じでも、IDの綴りが1文字違う、末尾に数字や記号がついている、ということがよくあります。
4つの手順:記録・共有・通報・注意喚起

手順1「記録」:消される前に残す
偽アカウントは、通報される前に自分で消えたり、名前を変えたりすることがあります。だから最初にやるのは記録です。通報のときにも、社内に説明するときにも、この記録が役に立ちます。
残しておきたいのは次の4つです。
- プロフィール画面のスクリーンショット(表示名・ユーザー名・アイコンが見える状態で)
- アカウントのURL(ユーザー名は変えられることがあるので、URLもコピーしておく)
- 問題の投稿やDMのスクリーンショット(フォロワーさんから届いたものがあれば、送ってもらう)
- 見つけた日時と、気づいたきっかけ(「10/23 9:10 フォロワーさんのDMで発覚」など)
偽アカウントをフォローしたり、DMを送ったりする必要はありません。見るだけ、記録するだけで大丈夫です。
手順2「共有」:ひとりで抱えず、すぐ知らせる
記録ができたら、上司と、必要に応じて広報・法務の責任者に知らせます。「確定してから報告しよう」と待たなくて大丈夫です。「偽アカウントらしきものを見つけました。いま記録を取りました」の段階で十分です。
共有するときは、次の形でまとめると伝わりやすくなります。
【なりすましアカウント 発見報告】
1. 見つけた日時ときっかけ:10/23 9:10/フォロワーさんからのDM
2. 対象のSNSとURL:Instagram/https://(偽アカウントのURL)
3. どんな動きをしているか:当選を装ったDMで、外部サイトへ誘導している
4. 被害の有無:「送料を払いそうになった」という声が1件(支払いはなし)
5. これからやること:本日中に通報、公式アカウントで注意喚起の案を作成
お金の支払いや個人情報の入力など、お客様に実際の被害が出ている場合は、対応の優先度が上がります。お客様への案内や警察への相談をどうするかは、上司・責任者と相談して決めましょう。連絡が回る順番を決めていないときは、企業SNSの緊急時連絡体制|すぐ連絡が回る仕組みの作り方が参考になります。
手順3「通報」:SNSの「なりすまし」窓口から
主なSNSには、なりすましを報告するための窓口が用意されています。多くの場合、偽アカウントのプロフィールにある「報告」のメニューから「なりすまし」を選ぶか、各SNSのヘルプセンターにある専用の報告フォームから進めます。
通報のときに意識しておきたいことは3つです。
- 「なりすまされている本人(会社)」として報告する:会社として報告すると、公式サイトのURLや、会社であることを示す資料の提出を求められることがあります。手順1の記録と一緒に、すぐ出せるようにしておくと進みが早くなります。
- SNSごとに別々に通報する:同じ偽アカウントが複数のSNSにある場合は、それぞれの窓口から報告します。
- 結果が出るまで少し時間がかかることがある:通報してすぐ消えるとは限りません。だからこそ、手順4の注意喚起を並行して進めます。
報告窓口の場所や必要な資料は、各SNSでたびたび変わります。通報するときは、各SNSの最新の公式ヘルプで「なりすまし」の報告方法を確認してください。
手順4「注意喚起」:「本物はこちら」とはっきり伝える
通報と並行して、公式アカウントと公式サイトでお客様にお知らせします。目的は、相手を責めることではなく、フォロワーさんが迷わず本物を選べるようにすることです。
そのまま使えるお知らせ文の例です。
【ご注意ください】
当社の名前やロゴを使った偽のアカウントが確認されています。当社の公式アカウントは、このアカウント(@◯◯◯◯)のみです。
当社からDMで、送料・手数料などのお支払いや、カード番号・パスワードの入力をお願いすることはありません。
不審なメッセージが届いた場合は、リンクを開かず、返信もしないようにお願いいたします。ご不安な点は、公式サイトのお問い合わせ窓口までご連絡ください。
書き方のポイントは次のとおりです。
- 「当社が◯◯をお願いすることはありません」を具体的に書く:お客様が自分で見分けられる目印になります。
- 偽アカウントへのリンクは貼らない:リンクを貼ると、かえって偽アカウントへの入り口になってしまいます。どうしても特徴を伝えたいときは、IDの違いを文章で示す程度にとどめます。
- 固定投稿にして、公式サイトのお知らせにも載せる:SNSを見ていないお客様にも届くようにします。
お詫びや経緯説明が必要な場面の文面は、企業SNSお詫び・謝罪文の書き方|信頼を落とさない構成と例文の構成が使えます。
具体例:当選詐欺型の偽アカウントに気づいた日
ある食品メーカーのSNS担当者が、Instagramのフォロワーさんから「当選のDMが来たけれど本物ですか」と連絡を受けた日の流れです。
| 時刻 | やったこと | 手順 |
|---|---|---|
| 9:10 | フォロワーさんのDMで偽アカウントに気づく。プロフィール・URL・届いたDMの画面を保存 | 記録 |
| 9:30 | 上司と広報責任者に、発見報告の5項目をチャットで共有 | 共有 |
| 10:00 | 会社としてInstagramの報告窓口から「なりすまし」で通報 | 通報 |
| 11:00 | 上司の確認を経て、公式アカウントと公式サイトに注意喚起を掲載。固定投稿にする | 注意喚起 |
発見から注意喚起まで、およそ2時間です。連絡をくれたフォロワーさんには「教えてくださってありがとうございます。そのアカウントは当社のものではありません」とお礼を返しました。
数日後、偽アカウントは見られなくなりました。この担当者がいちばんほっとしたのは、注意喚起の投稿に「教えてくれてありがとう」「本物がどれか分かって安心した」というコメントがついたことでした。誠実に、早く伝えたことが、かえって公式アカウントへの信頼につながったのです。
あなたへの影響
- 見つけたときに「何からやれば?」と固まる時間が減り、最初の1時間で落ち着いて動ける。
- 記録が残っているので、通報や社内への説明がスムーズになり、ひとりで背負わずに済む。
- 注意喚起の文面を先に用意しておくと、お客様の被害を小さくできる可能性が高まる。
- 「当社がDMでお願いしないこと」を示しておくことは、なりすましが出ていない平時にも、フォロワーさんの安心材料になる。
明日やること(15分でできる範囲)
- 自社の名前と「公式」「キャンペーン」などを組み合わせて、各SNSで一度検索してみる(見つからなければ、それで十分です)。
- 上の「発見報告」の5項目と「お知らせ文」を、社内の共有フォルダに保存しておく。
- 主に使っているSNSのヘルプセンターで、「なりすまし」の報告方法がどこにあるかだけ確かめておく。
- 公式サイトに、自社の公式SNSアカウントの一覧が載っているかを確認する。載っていなければ、追加をお願いする。
4番は、なりすましへのいちばん地道で効く備えです。お客様が「本物はどれ?」と迷ったときに、公式サイトを見れば答えがある状態にしておけます。日ごろの見回りのやり方は、炎上の兆候に早く気づくエゴサ習慣|企業SNSのモニタリング設計もあわせてどうぞ。
偽アカウント対応チェックリスト
- 記録
- プロフィール画面・URL・問題の投稿やDMを保存した
- 見つけた日時ときっかけを書き残した
- 偽アカウントをフォローしたり、DMを送ったりしていない
- 共有
- 上司と、必要に応じて広報・法務の責任者に知らせた
- お客様の被害(支払い・個人情報)の有無を確認し、あれば優先して相談した
- 通報
- 各SNSの「なりすまし」の報告窓口から、会社として通報した
- 公式サイトのURLなど、会社であることを示す資料をすぐ出せるようにした
- 同じ偽アカウントが他のSNSにもないか確認した
- 注意喚起
- 公式アカウントで「本物はこちら」と知らせ、固定投稿にした
- 「当社がDMでお願いしないこと」を具体的に書いた
- 偽アカウントへのリンクを貼っていない
- 公式サイトのお知らせにも載せた
全部を一度に完璧にしなくて大丈夫です。まずは太字の3つから。
最後に
自社の偽アカウントを見つけたとき、多くの担当者は「自分が守りきれなかった」と感じてしまいます。でも、なりすましは外で勝手に作られるもので、あなたの運用が足りなかった証ではありません。むしろ、偽物が出るのは、その名前が信頼されている証でもあります。
大事なのは、見つけたあとに、記録して、ひとりで抱えずに共有して、通報して、お客様に本物を伝えること。その一つひとつが、フォロワーさんを守る仕事です。
今日はまず、お知らせ文の例をひとつ保存しておきましょう。いざというとき、その準備があなたの背中を支えてくれます。

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